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日本の生活保護受給者は、2023年5月時点で202万7865人と言われており、多くの人が生活保護制度に支えられていることがわかります。
そんな日本の生活保護はいつから始まったのでしょうか?
歴史や変遷が気になります…
今回は日本の生活保護はいつから始まった?歴史や変遷を簡単にまとめてご紹介していきます。
では早速、日本の生活保護はいつから始まったのか、その歴史をまとめてご紹介していきましょう。
遡ること701年、奈良時代に制定された大宝律令の中に、生活保護の原点となる、生活困窮者に対する公的な救済制度が含まれていたと言われています。
また、江戸時代の前期にも御救金や御救米などの救済制度がありました。
ただし、御救金や御救米などは現在でいう定額給付金に近いもので、災害などが起こった時に給付されていました。
公的救済制度ではあるものの、生活保護のように毎月支給される制度ではなかったのですね。
近代的な公的扶助は明治時代に入って以降、確立されていきました。
まずは、1874年にできた恤救規則(じゅっきゅうきそく)で、これは日本で初めてとなる貧救法です。
支給されるものはお金でしたが、生活保護のように必要最低限の生活費まではもらえず、とても少なかったようです。
また、支給対象者は血縁関係を持った人がいない、尚且つ隣近所に頼れない人で、さらに70歳以上の働けないほど体が悪い人、13歳以下の孤児など、かなり限定的となっています。
とはいえ、この規則は新たな公的扶助ができるまでの50年以上も続き、おそらく多くの人々の命を救ったでしょう。
恤救規則以降にできた新しい公的扶助は、1932年に制定された救護法です。
救護法は、老衰、幼少、病弱、貧困、身体障害など、さまざまな理由で生活ができない人を公的に救済するための制度です。
対象者は、65歳以上の高齢者、13歳以下の子ども、妊産婦、その他精神や身体に障害があるもので、働けずに生活が困窮している人です。
救護法は法制的に整備が進み、近代的な公的扶助が確立されたと言ってもいい法律です。
ただし、救護法は失業による困窮者を対象としておらず、まだまだ十分な制度ではありませんでした。
救護法制定から10年ちょっと経った1945年、第二次世界大戦が終結し、日本国民の多くが失業、食糧不足、住宅難に見舞われていました。
この状況は救護法では対応が追いつかず、急遽、「生活困窮者緊急生活援護要綱」という制度が実施されました。
これは、戦災者や失業者、その家族を含んだ生活困窮者への救済を行うために作られたものです。
しかし、あくまで「生活困窮者緊急生活援護要綱」は臨時応急の措置として作られた要綱だったため、翌年の1946年に旧生活保護法が制定されることになりました。
旧生活保護法の制定から約10年経った1950年に、全面改正となった現行の生活保護法が成立しました。
生活保護の歴史はとても長く、何度も制度の改定が行われ、今の生活保護法が出来上がったんですね。
さて、次は昔と今の生活保護の変遷をご紹介しましょう。
生活保護には受給者に必要な生活費を定める「生活保護基準」が存在します。
そんな「生活保護基準」も昔と今では大きな変遷を遂げています。
旧生活保護法が制定されていた1948年から1960年度までは、「マーケットバスケット方式」という方式で「生活保護基準」が決まっていました。
「マーケットバスケット方式」とは、バスケットを持ってマーケット(市場)に行き、必要最低限の生活必需品を選び、その金額で最低生活費を割り出す方法のことをいいます。
これはイギリスで貧困調査を行ったラウントリーが1923年に考案した方法です。
「マーケットバスケット方式」での「生活保護基準」は長く続きましたが、1961年から科学的な「エンゲル係数方式」に切り替えられることになりました。
「エンゲル係数方式」とは、家計に対する食費の比率であるエンゲル係数を元に算出する方法です。
その後、一般的な世帯と生活保護世帯との格差がどんどん拡大していることを懸念し、1964年からは「格差縮小方式」が使われるようになりました。
「格差縮小方式」とは、一般的な世帯の生活水準の伸び率を参考に、生活保護世帯との格差が広がらないように調整して算出する方法です。
そして、この「格差縮小方式」が1984年まで続き、それ以降は生活保護受給者以外の低所得者の消費を比較して算出する「水準均衡方式」に変わりました。
そして、「水準均衡方式」は現在も使われています。
その時代にあった算出方法で、妥当な生活保護費を算出しているのですね。
昔と今の生活保護で大きく違うのは扶助の種類です。
現在の生活保護では、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類があります。
しかし、救護法の頃は生活扶、医療、助産、生業扶助の4種類しかありませんでした。
そして、旧生活保護法の頃は生活扶助、医療、助産、生業扶助に葬祭扶助が追加され、5種類になりました。
現行の生活保護法で教育扶助、住宅扶助、介護扶助の3つが追加され、合計8種類で今に至ります。
その時その時で見直しが行われ、生活困窮者が健康で文化的な生活をおくれるように工夫されている、ということでしょう。
今回は日本の生活保護はいつから始まった?歴史や変遷を簡単にまとめてご紹介しました。
日本の生活保護は「大宝律令」から、江戸時代前期の「御救金」や「御救米」、明治時代の「恤救規則」、1932年に制定された「救護法」、1945年に急遽できた「生活困窮者緊急生活援護要綱」、そして翌年に制定された「旧生活保護法」、1950年に全面見直しが行われた現在の「生活保護法」と長い歴史と変遷があったことがわかりました。
その間に生活保護基準の変更や扶助の種類も追加され、内容も常に時代に応じて変化を遂げています。
これからも生活保護には、生活困窮者のセーフティーネットとして、時代にあった支援を期待しましょう。
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