(営業時間9:30~18:30)
(24時間受付中)
生活保護について調べると「水際作戦」という言葉が出てきます。
「水際作戦」といえば、戦争などで上陸してくる敵軍に対して水際で撃滅する戦い方をイメージする人も多いでしょう。
では、生活保護の水際作戦とはどういったものなのでしょうか。
今回は生活保護の水際作戦とは?行われる理由からこれまでの事例、水際作戦への対策を徹底解説します。
では早速、生活保護の水際作戦について、言葉の意味と行われる理由からご紹介しましょう。
生活保護の水際作戦とは、生活保護の役所窓口などが生活困窮者に生活保護を申請させないように指導することをいいます。
水際作戦は、当然違法行為です。
それは、全ての生活困窮者に、生活保護の申請の権利があるからです。
申請の後は、管轄する福祉事務所によって審査が行われます。審査は口座を調べたり、親族へ扶養照会を送ったりと入念に行われます。
そのため、窓口の人が口頭で審査することも、即座に受給を決めることもありません。
しかし、実際は窓口でさまざまな理由を元に「あなたの条件では生活保護は受けられない」などと追い返され、申請書の提出さえ許されない場合があるのです。
生活保護は、最後のセーフティーネットと呼ばれる通り、人間の生死に関わる可能性も珍しくありません。
そのため、生活保護の水際作戦はあってはならず、社会の問題としても注目されています。
では、どうして生活保護の水際作戦が行われるのでしょうか。
それは地方自治体の財政負担を軽減するためです。
生活保護費は、4分の3を国が、4分の1を自治体が負担しています。
小さな自治体であれば、4分の1の負担も大きく感じられるため、できるだけ財政に負担がかからないように水際作戦で生活保護受給者の数を抑えているのです。
また、生活保護の手続きには多くの事務手続きが必要です。つまり、人材が必要になります。
自治体によっては、常に人手不足の場合もあります。
生活保護受給者が増えることで、仕事の負担を増やしたくないという理由も含まれているでしょう。
実際に、生活保護の水際作戦には多くの事例があります。
ここでは、有名な2つの事例をご紹介しましょう。
1つ目の事例は、群馬県桐生市の生活保護制度の不適切な運用です。
2024年はじめに、桐生市が生活保護受給者に対して、生活保護費を満額支給していないなど、通常ではありえない対応を行っていたことが発覚しました。
さらに、2011年から2022年度の間で生活保護受給者が半減、第三者委員会によると水際作戦が理由だと発覚しています。
例えば、生活保護の申請にきた人に対して「家族で協力すれば困窮しない」と言って追い返し、申請をさせなかったなどがあります。
また、申請書を受け取っても、行方不明の家族の名前を使って職員が「扶養届」を偽造し、収入認定とすることで生活保護の申請を却下するなど、非常に悪質な手口も見つかっています。
その他にも、窓口での暴言や威嚇などもあったと報告されています。
2つ目の事例は、福岡県北九州市の水際作戦によって申請希望者が餓死に至った問題です。
2006年に、身体障害者だった50代の男性が次男とともに生活保護の窓口へ相談へ向かったものの、「親族でよく話し合うように」と申請を断られました。
その後、再度窓口に生活保護の希望を伝えましたが、「長男に援助してもらえないか」と職員に言われ、帰宅。それから数ヶ月後に餓死した状態で発見されました。
親族の援助の可否は、生活保護を申請した後、福祉事務所がそれぞれに扶養照会として確認します。
そのため、本人が事前に確認する必要はなく、職員の対応は不適切だったと指摘を受けています。
このような事例は、おそらくまだまだ数多く存在するでしょう。
では、生活保護の申請を行う時、水際作戦の対策としてどのような準備を行えばいいでしょうか。
ここからは、生活保護申請前の人、必見!生活保護の水際作戦対策についてご紹介します。
まずは、生活保護の条件を把握することです。
生活保護の条件は「資産がない」「収入が最低生活費以下」「親族から援助してもらえない」などがあげられます。
しかし、不動産があっても資産価値が低く、現在住んでいる家であれば資産とは見なされません。
また、働いていても収入が最低生活費を下回れば、生活保護の受給資格はあります。
さらに、親族への扶養照会はDVや虐待を受けていたり、10年以上疎遠の場合には、送らないように依頼できます。
もしこれらの事柄を知らずに申請へ行くと、「持ち家は生活保護を受けられない」「仕事をしているなら申請しても許可されない」「親族への扶養照会は絶対」などと言われ、申請できないかもしれません。
知識を身につけて、どう言われても対応できるように準備しましょう。
次は、申請時に録音することです。
違法な水際作戦があった場合、録音を元に職員の態度を改めてもらうように自治体の上層部に報告できます。
どんな発言があったのか、記録するためにも役立つでしょう。
もし高齢者が生活保護を申請する場合、生活保護の勉強や録音などの対策が難しいかもしれません。
その場合、付き添いを頼むことをおすすめします。
付き添いの人が生活保護に詳しいと、より頼もしい存在になるでしょう。
付き添いは家族でもいいですが、最も適任なのが弁護士による付き添いです。
職員に対して、正しい知識で説明できるのはもちろん、違反があった際にも適切な処理が期待できます。
ただ、弁護士に依頼するとなると気になるのが費用です。
以下のサービスを利用することで、無料で弁護士へ依頼できます。
法テラスは、無料相談に加えて、低所得者の利用が免除になる場合があります。
日本弁護士連合会は、生活保護申請の代理業務を受け付けるなど、積極的に行っています。無料相談もあるため、一度問い合わせてみるのがおすすめです。
この記事もおすすめ
今回は生活保護の水際作戦とは?行われる理由からこれまでの事例、水際作戦への対策を徹底解説しました。
生活保護の水際作戦とは、生活保護の窓口が相談者に対して、さまざまな声かけで生活保護の申請をさせないようにする行為のことです。
自治体の財政負担軽減や事務手続きの負担軽減のために行われますが、水際作戦自体は違法行為です。
これまで、2024年の桐生市や2006年の北九州市など、水際作戦による不適切行為が多数行われてきました。
そのため、生活保護の申請を受け取ってもらえない場合は何らかの対策を行いましょう。
水際作戦の対策としては、「生活保護の条件を把握する」「申請時に録音する」「付き添いを頼む」などが考えられます。
特に、最適なのは弁護士の付き添いです。申請をスムーズに行い、生活の安定を目指しましょう。