日本が行う貧困問題の取り組みは?子どもや大人に対する支援制度は?

日本で暮らす人の多くが「貧困」はどこか遠い国の話だと思っているのではないでしょうか。

近年では、日本の相対的貧困率が高まり、約6人に1人が貧困といわれています。

じつはとても身近な貧困。日本の行政だけでなく、企業でも多くの取り組みが行われています。

今回は日本の貧困問題について、子どもや大人それぞれに対する支援制度、企業の取り組みをまとめてご紹介します。

日本の貧困は深刻

まずは、日本の貧困の現状をみていきましょう。

日本の貧困問題の特徴は「相対的貧困率」が高いことです。「相対的貧困」とはその国の水準と比較して、多くの人より貧しい状態のことをいいます。

2021年の「国民生活基礎調査」によると、日本の貧困率は15.4%で先進国で最悪な状態となりました。

日本の人口に当てはめると、約6人に1人が貧困です。さらに、母子家庭では2世帯に1世帯、高齢者世帯だと4世帯に1世帯以上が貧困で、その深刻さがわかります。

日本の現状を考えると、貧困世帯に対しての行政の支援制度や取り組みが重要になりますね。

子どもの貧困問題への取り組みとは

ではここから、貧困問題への支援制度や取り組みについてご紹介します。

はじめに、子どもの貧困問題への取り組みから解説していきましょう。

教育支援

貧困家庭の子どもたちは十分な教育が受けられない場合があります。

親の年収と子どもの学歴は比例すると言われており、実際に東大生の親の42.5%が平均世帯年収1050万円以上というデータがあります。(データ引用:「2020年度(第70回)学生生活実態調査」)

学歴によって生涯年収は変わり、学歴が低ければ低いほど年収は下がります。つまり、貧困は連鎖する可能性が高いのです。

そのため、貧困家庭の子どもたちへ教育支援を行うことは貧困の連鎖を止めることに繋がります。

具体的には以下の支援制度があります。

  • 幼児教育の無償化
  • 義務教育の就学援助
  • 高等学校等就学支援金制度
  • 高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)制度
  • 私立高等学校等の授業料減免

各制度には所得制限などの条件が課せられています。

経済支援

日本には子育て世帯を対象とした経済支援があります。

具体的には以下の通りです。

  • 児童手当
  • 児童扶養手当
  • 障害児福祉手当
  • 特別児童扶養手当
  • 乳幼児や義務教育就学児の医療費制度

児童扶養手当に関しては、ひとり親世帯に向けた支援制度です。その他、支援制度も所得制限があるのが特徴です。

また、手当だけでなく、

  • 母子父子寡婦福祉資金の貸付制度
  • 養育費及び面会交流に係る相談支援の実施

というひとり親世帯に向けた貸付制度、相談窓口なども用意されています。

就労支援

子育て中の貧困世帯は、子育てしながら働かなくてはいけません。

特に、ひとり親世帯は子育てと仕事、家事を1人で担う場合が多く、就労も簡単ではありません。また、専門的知識を備えて安定した職場で働く必要もあります。

それらを考えて、以下の就労支援も行っています。

  • 公的職業訓練…就業に向けた講座
  • 住居確保給付金の支給…就職活動をするなどの条件で支給される家賃補助
  • 家計相談支援事業…家計に対するアドバイス
  • 就労訓練事業…すぐに就労できない人のための準備支援
  • 一時生活支援事業…一時的な宿泊施設の提供

などです。

子育て中の母親には利用しやすいマザーズハローワークなどもあります。

大人の貧困問題への取り組みは?

貧困なのは子どもだけではありません。大人の貧困に対しても、さまざまな取り組みが行われています。

ここでは、大人の貧困問題への取り組みをご紹介します。

生活福祉資金貸付制度

貧困世帯は貯金することが難しく、病気や事故などで働けなくなった場合、経済的にさらに困窮状態に陥ります。

その一時的な生活費のために、生活福祉資金貸付制度があります。対象は、低所得者、高齢者、障害者などです。

連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は年1.5%と低利息なのが大きなメリットです。

無職であっても就職活動を行っていれば借入が認められます。ただし、審査は必要なので注意しましょう。

生活困窮者自立支援制度

生活に困窮し、最低限度の生活を維持できないおそれのある人を対象とした、生活困窮者自立支援制度もあります。

この制度は以下6つの事業に分けられます。

  • 自立相談支援事業
  • 住居確保給付金
  • 就労準備支援事業
  • 家計改善支援事業
  • 子どもの学習・生活支援事業
  • 一時生活支事業

貧困世帯の暮らしや住まい、仕事、家計の相談や支援を行っています。

お金の悩みは周囲の人でも話しにくい部分があります。しかし、1人で解決するのは難しい場合がほとんどです。悩みを抱え込まずに、気軽に窓口で相談しましょう。

生活保護

生活困窮者自立支援制度を受けても、困窮状態が解消されない場合は生活保護の受給を検討しましょう。

生活保護は最後のセーフティーネットと呼ばれる公的扶助制度です。

「収入が最低生活費以下」「資産がない」「援助してくれる親族がいない」などの受給条件がありますが、毎月その人にあった扶助や加算が受け取れます。

自立を目的としていますが、支給期間は制限されないため、生活の安定に専念できます。

企業の貧困問題の取り組みは?

行政の支援制度について、いくつか聞いたことがある人はいると思います。しかし、企業の取り組みはどうでしょうか。

最後に、企業の貧困問題の取り組みをみていきます。

ジモティー

地元の掲示板でお馴染みの「ジモティー」は、自社サービスの利用者にひとり親家庭が多いと知り、「ひとり親家庭応援キャンペーン」を実施しました。

キャンペーン内容は、ひとり親世帯の人へ使っていないものを譲った利用者にクーポンを配布するというものです。

子どもが使うものはすぐに移り変わる傾向にあります。例えば、洋服やおもちゃ、靴などです。

このキャンペーンは、多くの子どもたちが必要なものを手にできる素敵な取り組みですね。

グッドごはん

グッドごはんは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営するフードバンクのことです。

フードバンクとは、企業などから集めた規格外や過剰在庫などの食べ物を無償で提供する取り組みをいいます。

グッドごはんは首都圏、近畿圏、九州圏など幅広い地域で利用されており、対象はひとり親家庭等医療証の保有者です。

毎月約1万円以上の食料を100世帯以上に配っています。

フードバンクは、グッドごはん以外でも複数の団体で取り組まれているため、興味のある人はぜひ調べてみてください。

まとめ

今回は日本の貧困問題について、子どもや大人それぞれに対する支援制度、企業の取り組みをまとめてご紹介しました。

日本の貧困率は15.4%、約6人に1人が貧困です。深刻な貧困状態を支援するために、行政や企業がさまざまな取り組みを行っています。

手当などのような経済支援だけでなく、相談窓口や就労支援など、貧困状態から脱却するための支援が豊富です。

もし困ったら1人で悩まずに、これらの取り組みに頼ることが大切です。

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